第16章 【琥珀色】CT knock
ブツリ
そんな音が聞こえたかのような瞬間
いつもは柔らかく伸びの良い可憐な声が
波紋を広げる超音波のように室内に響き渡る。
「…っいい加減にしなさーーーーーいっ!!!」
彼女の“個性”はイルカか蝙蝠だっただろうか?
室内のガラスがガタガタと音をたてて震えている。
上がった一声は
今日は一段と凄まじい。
だがこれで治まる。
一山超えて、あとは彼女が説教をするだけだ。
「二人の喧嘩に私を巻き込まないでって言ってるでしょ!?
大体ね、いつも私を仲間外れにして喧嘩ばっかりしてるくせに、なんで最後は二人して仲良く私を責めるのっ!?」
ハイリの説教にツッコミどころなら山ほどある。
元はと言えばお前の勘違いが原因なのだと。
両手をバタバタとはためかせているのは
二人の視界に入ろうと主張しているのだろうか
平均的な女子高生の身長も男二人に囲まれては
その腕しか見えやしない。
伝わって来る
伝わっては来るのだ
轟を取られまいと二人の間に入るのに必死なのは痛いほどに。
(違う!!)
皆の心中は同じだった。
「誰かそろそろ教えてやれよ…。」
瀬呂が小声で提案する。
「気の毒だが致し方なかろう。」
常闇が首を振り
問題の3人を顎…ならぬ嘴で指した。
キャンキャンと吠えるハイリに
散らしていた火花を収める男二人。
「「…………。」」
そう、この二人を収められるのもハイリのみ。
真実を彼女に伝えたとして
男二人の関係は変わらない。
それどころか悪化しかねない。
クラスメイトがハイリに対して
未だに事実を告げられない理由の一つがこれである。
その様、例えるなら
仔犬に頭が上がらないライオン
皆は思った。
もしかしたらクラスで一番強いのは
ハイリなのかもしれないと……。
彼ら3人の複雑すぎる三角関係は
もう暫く…続きそうだ。