第3章 【桜色】恋愛性免疫不全
~Sideハイリ~
慌ただしい様なそうでない様な一日は
いつの間にか終わりを告げていた
そして波乱に満ちた一日が
始まろうとしていた。
(確かに、放っておけないとは思ったけど……)
「あの、なんでこんな事に……?」
「わりィ、寝ちまった。」
二人で寝るには決して広いとは言えないセミダブルのベッドで、
意識し始めたばかりの人に抱きしめられたまま朝を迎えようとは、流石に予想できなかった、かな……。
「………はよ。」
「お、おはよ……。」
轟くんは私より早く起きていた割に
まだ目が覚めきっていないように見えた。
私もどちらかと言えば寝覚めは悪い方だけど
目を開けた途端にこんな綺麗などアップ見せられたら
いくらなんでも目が覚めてしまう。
とりあえず、時間を確認しようと辺りを見渡したけれど
時計はおろかスマホも手の届く所には無かった。
「轟くん、ちょっと離して欲しいかも。」
「さみぃ…。」
「そだね、四月に掛布団無しじゃ寒いよね。
足元に布団あるから、離して?」
「……………。」
なんか…猫のような人だ。
背に回された腕には力が籠り、解放から掛け離れていくのをひしひしと感じる。
こんな状況にパニックを起こすのが普通なのだろうが
それ以上に重要な事に私は頭を悩ませていて、それどころじゃなかった。
「ね、お家に連絡しなくていいの?
心配してるんじゃない?」
たぶん時既に遅しだ。
それでも無いのと有るのとでは違うと思う。
ちなみにウチならきっと大騒ぎだ。
そう思っての提案だったのだけど
「夜中に姉さんにLINEした。」
とっくに連絡済みだった。
「早っ!」なんて思わず呟いちゃったけど、つっこむトコはそこじゃない…
「起きたんなら鍵なんか気にせずに
帰ればよかったのに……。」
「流石に電車動いてねぇ…。」
「成程…。」
何だかんだで原因は全てこちら側にあるので、何も言い返せなくなる。
結局、彼の目が覚めるまで待つ事にした。