第15章 【琥珀色】MRI knock
~Sideハイリ~
結局――
昨夜はあのまま流されてしまった。
(何も進展しなかった…。)
進展しなかったと言うよりは
させて貰えなかった…と言うべきだ。
昨日しとしと降った感情の雨。
鉛色をした雲から落ちて来るのは負の感情ばっかりだった。
一夜明けた今日、雨は止んでくれたけど
地は濡れてぬかるんでいる。
その上を軽やかに歩ける程の器が私にあれば
こんな事、考えずに済むんだろうけど…
(爆豪くんの事と言い、昨日の女の子の事と言い
焦凍は自分に対する好意に淡泊すぎると思うっ!)
どうやったら昼休みの出来事を
その日のうちに忘れられるのだろう。
真面目に聞いてくれないし
どこか楽しそうだったし
この人が飄々としてるのは今に始まったことじゃないけど、それにしたってあんまりだっ。
当校中、不満を募らせた頭は
別れ際に大きな手でくしゃと撫でられ、小さく右に傾いた。
(あれ…いつもと違う…。)
メガネのレンズ越しに見上げた今日の焦凍の表情は、少し寂しげに見える。
頭を撫でる手も遠慮がちだ。
私の願望が都合よくそう見せているんだろうか…。
それとも焦凍の向こう側の空が灰色だからだろうか…。
重い、暗い灰色から白へのグラデーション。
今の胸の内と同じ色に
この状況は、お前が作り出したものなのだから
そう言われている気がして、募らせていた不満は一瞬で霧散した。