第2章 【桜色】先天性世話焼き
~Sideハイリ~
誰にだってなりたい自分がある。
そしてそれを目指す権利も皆等しくあるものだ。
それはずっと自分に言い聞かせて来た言葉だった。
だから
偉そうなことを言ってしまった気がするけれど本心だ。
言いたい事を言い終えてふと自分の状況を顧みれば
いつの間にか凄い体制だった。
ベッドの上で壁ドンと言うのは流石に平常心を保てない。
でも私の結論に対して轟くんは顔を伏せたままで、とてもツッコめる空気ではなかった。
(なんか、驚かせてしまったみたいだけど…大丈夫かな?)
私の言葉を聞いて、何だかすごく驚いてた。
デリケートな部分に触れてしまったのかもしれない。
顔を覗こうにも俯いた頭は目の前で、
動いたら額がぶつかりそうだ。
仮に覗きこめたとしても
今は知らない振りをするのが親切と言うものだろう。
自分を落ち着けようと大きく深呼吸をした直後
右肩に小さな頭が乗って、それも意味を無くしてしまった。
「わりィ、少し借りていいか?」
「う……うん。」
声が上ずる程の緊張も、絶対伝わっているはずの鼓動も
僅かに震える轟くんの肩に気付いた途端潰えてしまう。
「なぁ、これがお前の治療か?」
「……だから専門外だってば。」
なのに
そう言って壁についていた腕が私の背に回ったものだから、もう何も考えられなくなって
ただ、サラサラの髪を撫でた。
「無意識かよ。」
掠れた声が肩を濡らす温かい雫の正体を告げる。
きっと私はもう、この人を放っておくことは出来ないだろう。
同情でも使命感でもない
どこからか感じていた予感は確信へと変わっていった。