第13章 ♦番外編♦ 熱焦の瘢痕
~Side轟~
「焦凍?」
声が近付いてくる――
我慢しようって時に限ってコイツは無防備な気がする。
触れてすらいないのに酔わされる――
そんな頭じゃロクに考えることも出来やしねぇ。
理性なんてあっても無くても変わんねぇんだ。
苦笑を漏らすと頬にヒタリと冷たい指が触れた。
ずっとこんな格好してんだ
身体が冷えるのは当たり前の事。
それでも丸い瞳は薄く開いた俺の目を凝視する。
「大丈夫…っぽいね。」
「俺よりお前だろ、手が冷てェ。」
こんな時でも俺を心配する。
そんな身体を抱き寄せて、
身じろぎすら出来ねぇほど抱きしめて、
耳に息を吹き込みながら囁く。
「温めてやる…。」
何ならいっそ溶かしてやる
お前が望むなら焦がしてだってやる。
白い肌に花びらを散らした身体は瞬く間に熱を上げ
いつものように指先が俺の目元を撫でた。
「消えたら、またつけてね?」
「消える前につけてやる。」
囁く言葉に色がのる。
始まるのは昨夜の続き、終わりのない戯れだ。
触れ合う肌はもう熱いくらいだってのに
離す気もねぇし、離れる気配もねぇ…。
「今日は結局何すんだ?」
「どこにも行く気ないくせに…。」
まるで遊ぶように言葉を交わしては
僅かな隙間も無いくらいに絡まり合って笑い合う。
「行く気がない訳じゃねぇ。」
「ん?」
どこに行ったって同じなだけだ。
俺にとって大事なのはハイリが居るか居ないか
ただそれだけだからな。
だけどこの気持ちを言葉にしちまったら
とんでもなく安っぽいものになるように思えて
笑うに留める。
言葉を熱に変えて――
結局、この日は
家どころかベッドから出る事さえしなかった。