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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第106章 【番外編】願い事


お祭りの食事を食べたのがかれこれ数年前でほとんど覚えてなかったけれど、こんなに美味しいものかと驚いた。
見たことないくるくるしたポテトや、光るかき氷。
食べ終わってリップを付け直しながら、みんなが射的やボール当てで張り合ってるのを後ろから見てくすくすと笑った。
きっと、みんなで来たから楽しいんだな、なんて、思った。

繋心さんと食べようとお持ち帰り出来る小さなカステラと、りんご飴を籠バッグに入れた。
一周して戻ると鉄板で色んな物を焼いて売ってる繋心さんがいた。
「戻りました〜」
と一応声を掛けると、
「おう、中で待ってろ」
優しく言ってお店の扉を開けてくれる。
皆と解散して、少し暗いお店の中で椅子に座った。
楽しすぎて気づかなかったけど、下駄で靴擦れしている。
「あ…痛い…」
水洗いしてから絆創膏しようと立ち上がったところで、後ろからぎゅっと腕を回されて止められる。
「ふぇ!?」
後ろに体重を全部預けても受け止められ、慣れたように羽交い締めされた。
「ぁ、おつかれさま、です…」
すぐに誰かわかってドキドキする。
相変わらず、好きという気持ちが大きすぎて、全身が脈打ってるみたい。
「もうすぐ落ち着くから…花火は一緒に見るか?」
声しかわからないけれど、拗ねたような怒ってるような態度。
ぶっきらぼうだけど優しく強く抱き締められる。
「一緒に、行きたいです……」

繋心さんのお母様が町内会の盆踊りからもうすぐ帰ってきて店番を交代してくれる、と話してくれた。
私が一緒にお店の前に立っているのを見るや否や駆け足で来て
「いつまでやってるの!
早く花火の席取りに行きなさいな、女の子待たせるなんて!」
と早口で急かしてきた。
「いやだって……」
「もう、早く早く!
るるちゃんごめんね、気が利かなくて」
さっさっ、と手をあっちいけというふうに動かして、私達を追い出すように見送る。
「ったく、自分勝手だな…」
と静かに悪態をつくと、こっち、と手首を大きな手のひらが包む。
「あ、はい…!」
さっき行った神社の裏手側に回ると、細い石の階段がある。
「ちょっときついけど、ここ登ったらよく見えるから…」
「頑張ります…!」
もう真っ暗でほとんど街灯のないそこを、スマホの懐中電灯で照らして登る。
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