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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第69章 【番外編】夏の夜の夢


寝不足の中、起こすつもりもなかったが、るるは起きて朝食も用意してくれた。
長旅だろうと握り飯をいくつかラップに包んで、鞄に入れてくれる。
「こっちは、皆で食べてください」
昼間の知らないうちに、焼き菓子や小さなゼリーも用意してくれたようだった。
冷凍してあるため、昼過ぎには程よく食べられるだろう。
「アイツらには勿体ねーよ」
「行けなくてごめんね、って、伝えてくださいね…」
「ぜってー言わねー」
くすくすと嬉しそうに笑われ、お見送りのキスをされた。
ふと、昨晩のことを思い出し、むずむずした気持ちになった。

相変わらずの土砂降りで、集合場所に行った。
だが、山奥にある合宿場までの道で大きな土砂災害があったらしく、通行止めだった。
これ以上は行っても危険だし、帰ってこれる保証もなくなるということで、急遽中止になった。
かわりに、どこかで日程を組んで、改めてメニューをこなそうと話し合いがその場でされ、土産に持たされたものをばら蒔いて帰路についた。
残念ながら、帰り道もとんでもない渋滞で、うちに着く頃には夜遅かった。

「たでーま」
レインブーツとコートがかかっていたため、るるは家にいると思っていたが返事がない。
朝早かったから、もう寝ているのだろうか。
昨夜の熱い一夜はなんだったのかとすら思わせる調子狂いな天気に、やれやれと思わざるおえない。
ふと、自分のではない男物の靴が気になる。
サイズも違うし、ずぶ濡れだ。

裏切られたと。
土砂降りの雨の中、けたたましい風の音。
服を脱いだ二人が絡み合うように眠っている。
蒸し暑い室内に、るるの香りだけが噎せかえるように漂った。
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