第59章 【番外編】帰ったら覚えとけ
「お疲れ様ー!
さっき皆におにぎり買っといたから、帰りながらどうぞー」
「あれ?」
おにぎりを渡しているるるさんに、日向が振り返る。
今日はいつものように、来たときに言う台詞はなかった。
だからか、凄く油断してしまった。
今日はなにもない。
(…てか、高3になったんだから俺もいい加減慣れろ…)
内心で呆れつつ、ふわっといつもの初恋の香りを感じる。
「どうした?」
「いや、るる先輩、今すごい…綺麗だった…」
新しい言葉が出てきた?
と未知の単語を理解しようとした。
さしずめ、コイツも哀れな俺の仲間入りを果たしたのかと思った。
「めっちゃ綺麗っつーか……」
「意味変わってねえよ」
「来たときより、ぐっときた!」
「来たときより?」
なんとなく、察しがつくと共に、それ以上聞かないようにした。
「あー!!」
気付いた日向が大声をあげる。
「それ以上言うなよ」
釘を刺しておいたが、効果はなかった。