第58章 まほろば
はっと、目が覚める。
汗がびっしょりなのに、震えるくらいに寒い。
「はあ…」
エアコンの効いた部屋が爽やかな朝を告げる。
心のどろっとした気持ち悪い部分を残しながら。
体温のある方を探ると、愛しい人。
昨夜の熱がほんのりと身体の中に残っている。
未だにそれを思い出すと照れてしまうのは、それだけ好きってことなんだろうな、なんて思う。
不安と寒さで、ゆっくりその逞しい腰に抱きつく。
向かい合うように寝ていたからか、躊躇なく腕が背中に回ってきた。
安心感と温かさ、欲しかったものがいっぺんに貰えて、満たされると共に、腰がきゅんと疼いた。
「……どした?」
寝起きの声が、可愛くて好き。
「ちょっと、寒くて…」
「よしよし」
子供をあやすかのように、背中が撫でられる。
私の背負った罪と罰も優しく諭されているようで、嬉しい。
「…っ、好き…!」
「知ってる」
にっ、と笑われて、唯一身に纏っていた布の裾から手を入れられて、改めて背中を撫でる。
「…んっ」
その手つきが、昨晩を思い出させる。
熱に浮かされて、名前を呼び合って。
いつもしているのに、夢のせいで、ぐっとより背徳的に思える。
「いやぁ…」