第9章 カテキョの代金
要求は何なのか教えてくれる事もなく、頭から手が離れていく。
「さて、勉強再開するか」
話を切り替えるように目線が机の上に向き、強制的に勉強に戻された。
この状態で勉強出来る程、能天気ではない。
「あの、鉄朗」
「…ん?」
「お金じゃないなら、何が欲しいの?」
「このページ、全部解けたら教えてやるよ」
知らない方がいいような気がする。
だからって訳じゃないけど、問題が解けない。
参考書とノートを交互に見ても、何も思い浮かばない。
問題に詰まって数分。
鉄朗がヒントを出すように例題を指差した。
そこを読むと、なんとか問題が解ける。
他の問題でも詰まる度に、同じ行動が繰り返されて、かなり時間をかけて言われたページの問題が終わった。
そう、終わってしまった。
「おー。満点。…つっても、俺がいなきゃ1問も解けてなくね?」
「いなかったら、もうちょい解けたよ」
「なんでだよ?」
鉄朗の顔がニヤニヤしている。
要求が気になって仕方がなかったのを分かってそうだ。
何を言い返しても、悔しくなっていくだけのような気がして口を閉じた。
「…で、俺のカテキョ代なんだが」
沈黙で気まずい空気にならない内に、核心に触れる言葉が聞こえて心臓が跳ねた。
「金より貴重なモンが欲しいんだよ」
ここまできて、まだ隠される。
こんなにドキドキさせるくらいなら、早く言って欲しい。
「それは、春華の…」
まだ、焦らすように言葉が止まった。