第9章 カテキョの代金
私の機嫌はどんどん悪くなる。
こんなんじゃ、いくらやっても頭になんか入らない。
「教えなくていいから、帰って!」
「イヤですー」
感情に任せて怒鳴っても効果は無し。
鉄朗が居ると、それだけで緊張するし、口を挟まれるとイライラするし、良いことなんか1つもない。
「もう別れる!」
解決策がこれしか思い浮かばなくて、勢いのまま吐き出した。
途端に、冷えた空気。
暖房も使っているのに、凍えそうだ。
「お前、それ、本気?」
腹の底から出されたみたいな低い声が部屋に響く。
咄嗟に首を横に振った。
「じゃ、なんでそんな事言ったんだ?」
無言はきっと許されない。
「だって、お金取るとか言うし」
「別に金要求してねぇよ?」
「冗談だったんだろうって頭では分かってる。でも、今そんな冗談受け取れる余裕なかったんだもん」
だって、でも。
子どもみたいな言い訳。
こんなので、許してくれるとは思えない。
予想に反して、鉄朗は笑った。
お得意の口角を上げた笑顔。
所謂、企み笑顔。
「冗談のつもりじゃねぇけど?」
今は怒られている訳じゃない。
だけど、さっきよりもずっと恐ろしい事を言われている気がして体が強張る。
「なーに、固まってんだよ?別に無茶な事は要求しねぇから安心しろ」
今度こそ、普通の笑顔になって、軽く頭をポンポンされた。