第8章 いつか王子様に
そんな事も続けて言って、急に黙り込む菅原さんに手を伸ばして揺すってみる。
···急に寝てる?
「菅原さん···菅原さんってば!」
何度声をかけても、何度体を揺すってみても、スゥスゥと寝息が聞こえるばかりで。
まさかの寝たフリ、とか?
その可能性はあるじゃないか!
だって、さっきまで普通に喋ってたのに!
「菅原さん!寝たフリしてもバレてますよ!」
グイッともう一度、菅原さんの体を押していると···
澤「うるさいぞ日向!早く寝る!!」
キャプテンからのカミナリが、おれにだけ落ちた。
「すみません···」
ポツリと言って菅原さんを見れば、微かに揺れる肩···
やっぱり寝たフリか!
ズルいなぁ、菅原さん。
おれだけキャプテンに怒られたし。
もぞもぞと寝返りをうちながら、小さなため息を吐く。
明日になったら···昨日までとは違う目線で、何かを見る事が出来るんだろうか。
壁の向こう側、頂の景色、そんなのとは違う···新しい気持ちが増えた、新しい日常。
明日から、もうちょっと話しかけてみよう。
明日から、もうちょっと近くに行ってみよう。
明日から···
明日、から···
いろんな事を考えながらも、布団の温かさと、ちょっとずつ重くなる瞼に抵抗出来なくなり。
···おやすみ、池田さん。
また明日ね···と心で言って、そのまま目を閉じた。
~ END ~