第7章 新年のご挨拶
「こっち向けって」
顔を両手で挟まれて、ぐいっと無理矢理夕の方に顔を向けられた。
夕の大きな目はしっかりと私を見つめている。
なんて残酷なことをするんだろう。
こんなに顔を近づけてフルなんてさ。
酷い男もいたもんだ、なんて思ったのも束の間。
「好きだ」
あまりにシンプルに告げられた言葉に、実感がもてなくて、まばたきをひとつ。
表情の変わらない私とは反対に、夕の顔はみるみる赤く染まっていく。
そのうち耐えきれなくなったのか、先に視線をそらしたのは夕だった。
「…うそ、でしょ」
「嘘じゃねぇ! 本気だ」
視線を交えずに、夕は叫んだ。
ゆでだこみたいな顔を見れば、それが本心だって分かったけれど。
それでもまだ信じられない。
だってそばにいたのに気付かなかった。
ずっと夕のこと見てたのに、気付かなかった。
「ウソだよ、だって、今までそんなそぶりひとつも」
「疑うってんなら証明してやる」
顔を赤くさせたまま、急に夕の顔が近づいた。
驚いて思わず目を瞑ったら、唇に熱がともった。
嬉しいけれど恥ずかしくて身を離そうとすると、夕の手がぐっと私の頭と腰を抱いた。
抗えない力強さに、抵抗をやめて身を預ける。
一度息を吸うため離れた唇は、またすぐに触れ合った。
互いの熱を奪うように重ねた口づけは、ひどく甘い味がした。
ーー夕、あけましておめでとう。
今年も、来年も、その次も、どうぞよろしくお願いします。
ーfinー