第5章 葵の花
「受かってますように…!」
「試験は終わってるから、今願ったって遅いだろ」
「気分だよ、気分!」
あ、と二人で声を合わせれば視線の先には
合格者発表の掲示板。
「3、5、2、3……!
あったよ!衛輔くん!」
「俺もあった、よかったな」
クシャリと笑う顔に元気づけられて
今日まで頑張ってこられた。
頭をぽん、と撫でればまた気持ちよさそうに目を細める。
「なぁ、春華来る途中、考えてたんだけどさ」
やっと、決心ついたんだ。
あの時はあんな風な言い方しか出来なかったけど
ゴールはまだ先にあるけど…。
「ん?どうしたの?」
「俺と一緒に住まないか?」
「うん」
恥ずかしそうに、視線を泳がせて。
その可愛らしい仕草に胸がギュゥ、と締め付けられる。
そんな事、こいつには絶対言えねぇ、けど。
「毎日、会えるな」
「嬉しい?」
「うるせぇ」
冗談交じりに笑う帰り道。
照れくささを隠して悪態ついて。
視界の隅にはいつか通ったショーウィンドウの向こうには
あのウエディングドレス。
いつかその隣を歩けるように……。