第1章 未来へ繋がる願い
岩「···そのまんまの意味だ」
『そしたら今、手を繋いでるのは及川君ってことになるけどいいの?』
岩「速攻離すけど、いいんだな?」
ニヤリ、と笑いながら繋いだ手を解こうとモゾモゾする。
『あ、ちょっと!それはズルい!』
岩「ズルくねぇよ、俺はクソ川と手を繋ぐ趣味はねぇし」
解けかけた手を、私からキュッと繋ぎ直す。
『私は及川君じゃないもん!だから、えっと···』
岩「お前の手を、俺が離すわけないだろ、バーカ」
ただ繋がれていただけの手を、今度は指を絡めて繋ぎ直す。
今までしてくれた事のない、暖かい繋ぎ方。
岩「嬉しそうな顔しやがって」
ポツリと言って、素っ気なく、また歩き出す。
でもね?
私からは、見えちゃってる。
···ほんのりと色付いた、耳が。
それを言えば、きっと、寒いからだ!とか言うんだろうけど。
私は気付いてるよ?
私のドキドキと同じくらい、ハジメもドキドキしてくれてるってこと。
だって。
絡めた指先が、小さく震えてるから。
岩「拝観するまで、まだまだ先が長ぇな」
『ゆっくり進めばイイじゃん?』
少しでも長く、一緒にいたいから。
岩「ずっと外にいたら寒いだろうが」
『そう?私は平気だよ?』
だって、心は···こんなにもポカポカしてるから。
岩「体温高いとか、子供かよ」
『子供かどうか、後で確認してみる?なんてね』
岩「ば···バッカじゃねぇの!何言ってんだお前は!及川かっ!」
『あ~!また及川君と同じにした!』
岩「うるせぇよ!」
こんな風に言い合える日々も、あと僅か。
『ずっと···離さないでね?』
いろんな願いを込めて、お願いをする。
岩「離すわけねぇだろ、お前の手を」
期待、しちゃうよ?
胸の奥で呟いて、人混みに押されたフリをして寄り添ってみる。
岩「あんま引っ付くなよ、歩きにくいだろうが」
『人混みなんだから、いいじゃん!』
岩「ったく、しょうがねぇヤツ」
私から見える耳は、まだ、赤いまま。
『寒いねぇ~』
岩「お前さっき、平気だって言ってただろ!」
『あ、雪だ···』
岩「だから帰るかって言ったのによ」
『帰らないってば!』
神様のところまでは、あと、もう少し。
私の願い事は···
~ END ~