第1章 未来へ繋がる願い
『わぁ···やっぱり人が凄いたくさんいる···』
岩「だから言ったべや、今日はどこ行ったって人混みだらけだって」
『それは···そうだけど···』
だって、そういうの分かってても。
この新しい年の一日目を、一緒に過ごしたかったんだもん。
春高バレー県代表の大会で、惜しくも烏野に負けてしまい引退を余儀なくしたけど。
その後だって、後輩指導だとか、私の予備校だとかで予定がなかなか合わなくて···
だから、丸一日ずっと一緒に過ごすなら···今日しかなかったから。
岩「で、どうすんだ?帰るか?」
『···帰らない。意地でもお参りする!』
岩「今日お参りしなくたって、神様は逃げねぇよ」
『それでも、今日!』
ねぇ、気が付いてる?
一緒に学校生活過ごすのも、あと少しだけなんだよ?
春になったら、別々の大学なんだからさ。
···気付いてる?
それとも、気付かないフリ···してるの?
高校卒業しても、この関係が終わるわけじゃない。
けど、別々の学校生活が始まるのって。
やっぱり···寂しいよ。
岩「ったく。しょうがねぇな、お前は···ほら、行くぞ」
私の前に、スっと伸ばされた手。
手、繋いでくれるの?
瞬きを繰り返すだけの私を見て、ちょっとだけ照れ臭そうに横を向きながら、早くしろ、と続ける。
岩「こんだけ人混みの中を歩くんだ。はぐれたら、探す方が面倒だからな」
差し出された手に、そっと自分の手を重ねると、そのままキュッと掴まれた。
岩「どんなに引っ張られても、ぜってぇ俺の手を離すんじゃねぇぞ。わかったな?」
『うん!そっちこそ、離さないでよね?』
わざと茶化しながら返して、手を繋いで歩き出す。
ずっとバレーボールを続けていて、カサついた手。
どれだけたくさんのボールを打って来たのかは、分からないけど。
私はこの、大きくて、カサついた手が好きだ。
普段は及川君たちが茶化すから、手なんて···なかなか繋いでくれることなんてないけど。
だからこそ、こんな風に人前で手を繋いでくれるのが嬉しい。
岩「なぁに、ニヤニヤしてやがる」
振り返って私の顔を覗きながら、不貞腐れたように小さく息を吐く。
『別に~?』
岩「お前···最近クソ川みたいだぞ?自覚あんのか?」
『え~?及川君みたいとか、それどういう意味よ?』