第1章 年下に見えない彼
花井「んー。ここ分かんねーす。」
私の隣で首を傾げる男の子、花井梓。
本人はあずさって名前が嫌いらしい。親にも、私の前では花井と呼ばせている。花井くんは野球部のキャプテンで、毎日遅くまで部活を頑張っている。
ももか「これは、動詞にかかるようにしないと。ね?」
花井「あー、なるほど!」
きっと部活で疲れてるのに、花井くんは勉強も毎日欠かさずがんばっている。こういうとこ本当に感心しちゃう。
ももか「部活もあるのに、勉強もがんばって本当すごいね。花井くんは。」
花井「んなことないっすよ。ももかさんも、すいません。こんな時間から家庭教師ついてもらって。」
ももか「いいのいいの!家も割と近いし。」
花井「よかった。」
ももか「じゃー次の問題いこーか?」
花井「うぃっす。」
花井くんが真剣に問題を解いている姿についドキドキしてしまう。大きな背中、大きな手のひら、長い足…。メガネが似合うすっとした顔立ち。つい、じっと見つめてしまう。
花井「ん?どうかしましたか?」
花井くんが私の顔を下からのぞき込む。
ももか「やっ!なんでもない!」
私はついびっくりしてしまい、机に置いてあったお茶をこぼしてしまう。
ももか「わっ、ごめん!!」
花井「いや、大丈夫っす。ももかさん、やけどしてないっすか?」
花井くんはさっと零れたお茶をふいてくれる。
ももか「ちょっとスカート濡れちゃった…。」
花井「じゃー拭きますから。」
花井くんは、かがみ込んで私のスカートに手を伸ばす。
ももか「や、やだ!」
思わず花井くんを押しのけてしまった。
花井「す、すいません!」
ももか「ごめん…。」
花井「ほんと、すいません!別に下心とかないっすから!」
花井くんの顔が赤くなる。
ももか「わかってるから。私こそごめん。男の人に触られるの苦手で…。」
花井「なんかあったんすか?」
ももか「…。」
花井くんが不安そうな顔をする。
花井「あー!すいません。言いたくなかったらいいっす!」