第3章 後編
一週間後。
ユーリは何とか残っていた資金で、宿を渡り歩いていたが、そろそろ限界が来そうだった。
どこかで働こうにも住所不定で未成年、きっとろくな働き場所はないだろう。
だけど、そうも言ってられない。
ユーリはため息を吐くと、何でもいいので仕事を探すことにした。
そして働き先を探していると、偶然か奇跡かローの噂を聞いた。
既に契約者を変更した話は広まっており、今どこにいるのかも分かってしまった。
…最後に、もう一度だけ会いに行こうか。
ふとユーリはそう思った。
今ローは土の礼拝堂にいるらしく、ここからそう遠く離れていない場所にあるようだった。
何とも未練がましくて鬱陶しいかもしれないが、どうしてもちゃんとした理由を知りたかった。
ローは私の力では足りないと言っていたが、本当にそうだろうか。
生気だけでも十分に彼の魔力が回復できたのを、ユーリは何度も見てきた。
それに意識を失う瞬間に見た、彼の辛そうな表情。
「…もし駄目でも、これで最後にするから」
ユーリは意を決すると、居てもたってもいられなくなり、早急にローがいる場所へと向かった。
例え拒絶されたとしても、もう一度だけ彼の話を聞きたかった。
ユーリの歩くスピードは速くなり、次第に駆けていく。
魔物が出る森の中に入っても彼女の足は止まらなかった。
もしここで魔物に殺されるなら、それも仕方ないだろう。
だって私は、戦う術などないのだから。
母が命を掛けて守ろうとしてくれたこの命。
申し訳ない気持ちも、もちろんあった。
だけど、ここで引き返したら、駄目なような気がしたのだ。
ユーリは、どんどん森の奥へと入っていった。
…不思議と、魔物が現れる様子はなかった。