第3章 後編
ユーリは魔力で身を守りながら、施設の中を出来るだけ早く移動していた。
強い魔力を持っているユーリでも、気を抜けば意識を失うほどのものだった。
構図が分からないし、悠長にしていられない。
ユーリは何度も嘔吐しながらローを必死に探していた。
魔力がどんどん消耗していく。
もし私の魔力が尽きたらどうなるだろうか。
ユーリは施設内を駆け回りながら、脳裏に浮かんだ最悪のシナリオを考えた。
ここでユーリがローを救えなければ、きっとこの先永遠に、彼を助けれる人が現れないかもしれない。
そのことに、ユーリは恐怖を感じた。
失敗は許されないのだ。
ユーリはどうしてもローを助けたかった。
一緒に過ごして1年も経ってないが、ユーリは何時の間にかローに惹かれていた。
だが相手は英霊であり、ユーリのことなど眼中にないと思っていた。
だからこの想いは、そっと心に仕舞っておくことにしたのだ。
…だけど、彼はこの場所から助けたい。
別に見返りなんか求めてない。
ユーリは純粋に、ローには幸せになって欲しいと願っていた。
それが例え別の人と結ばれることになっても。
ユーリは痛んだ心に気づかない振りをして、地下へと続く階段を見つけたのでその先へと進んだ。
そして施設に入って一時間。
奥深くに行くに連れて、奇妙な生物と遭遇するようになった。
恐らく汚染された魔力による突然変異なのだろう。
魔物にしては気味の悪いその生物達は、面倒なことにユーリを攻撃してきた。
魔力の消費を抑えつつ、ユーリは彼らを倒していった。
当然、ユーリの身体はボロボロになっていく。
もしかしたら精神もやられ始めているかもしれない。
ユーリはぼやけていく思考回路に、不安を覚えた。
……弱気になったらだめだ。私の命と引き換えでもいいから、絶対に彼を助けないと。
ユーリは吐きすぎてもう胃液しかでなかったが、次第に血を吐くようになっていった。
だけど彼女の足は止まらない。
全ては、ローの為だった。