第2章 アネモネの夢51~99
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「雹牙、暫く百合ちゃんに近付くの禁止」
「は?」
は?じゃないよ、最近雹牙が百合ちゃんをデロ甘に甘やかすから彼女不安がって泣いて私に相談してきたんだから。確かにやりたい事してあげてとは言ったけどあそこまで甘いと思わなかった。
付き合ってもいないのに対応が恋人ですよ。まだ早い。まーだ早い!!
何で急に甘やかされまくったのか理由が分からず不安が爆発してしまった百合ちゃんは私の部屋で寝ています。
「加減が欲しかった」
「俺は構い過ぎたのか?」
「それもあるけど」
私の部屋でゆっくり百合ちゃんと話して下さい。私はほとぼりが冷めるまで黒羽の部屋に居るから。
そう言って雹牙を部屋に押し込んで手を振れば珍しくも焦った目と合った。
市の部屋に詰め込まれ一瞬焦ったが、ふう、と息を吐いて自分を落ち着かせて此方を見る百合の隣に座った。
迷惑だったか?なるだけ優しい声を出し問えば百合はぶんぶんと首を横に振って、迷惑ではないと返って来た
「何で…私に構うんですか?雹牙さんなら私なんかじゃなく、もっと良い女性いるじゃないですか」
「最初は社交辞令だったのは認める。ほんの気まぐれだった。最初はな。俺にしては珍しいと皆に言われる程お前が大切なものになっていたらしい」
「らしいって」
「俺は自分の感情を自覚したり、表現したりするのは苦手だ。だからこそ、言われて気付いた感情がある」
じっと、百合と視線を合わせれば、素直に見つめ返してくるのに少し安堵する。
「何故構うのか、大切だからだろう。上手く言葉が出て来ない、済まんな…お前に記憶が無い飲み会の時。好きだと言われて戸惑ったが嬉しくもあった」
「へ、私告白したんですか?」
「思い切り」
顔を真っ赤にさせて、私ってば!と小さく狼狽える様子を見て。思わず小さく笑いが零れる。笑わないで下さいと小さく膨らむ頬を指で突つく
さて、どう話を進めればいいのか、黒羽ならばまだマシに話せただろうに。
「何で急に甘やかすという態度に?」
「やはり急過ぎたか」
「驚いて不安になる程に、私ずっと雹牙さんに妹扱いされてるのだと思ってました」
「妹扱い?ああ、市と同じ事してたか」
「無自覚ですか」
「そうだな、妹扱いではなく」