第2章 アネモネの夢51~99
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最近、正しくは会社の飲み会に迎えに来て貰ってから、なんか雹牙さんがまめまめしくなった。私に対して……。
『仕事終わったら連絡しろ』
『今終わって更衣室です』
『わかった。迎えに行くから会社に居ろ』
更衣室に入って個人の携帯を確認したら雹牙さんから連絡が入ってたので、返事を返すと直ぐに返事が返ってきた。
お仕事どうしてるんだろうと首を傾げるけど、基本的に織田家の方々は昴君まで皆出来が普通の人と違うのでしっかり終わってるんだろうと思い直す。
が、最近毎日こんな感じに連絡が入ってお迎えに来てくれるし、朝は出かけようとすると捕まって車に乗せられて送られてくるのである。
先日のお迎えからこっちまめまめしい雹牙さんのおかげですっかりと社内で私の彼氏認定されてるんだけど、大丈夫なんだろうか? 好きな人、いたりしない?
ちょっと不安になりつつ言いつけを守ってお迎えを待ってる私は、結構女々しい……。
「おい、なんでまだ髪濡れっ放しなんだ」
「ふぇ?」
「ちょっと来い、ここ座れ」
帰宅後、お風呂を上がってからタオルドライしただけでドライヤーが面倒くさくて放ってたら、それを見た雹牙さんにくいっと引っ張られて椅子に座らされた。
何するのかと思ってたらドライヤーを持ってきて私の髪の毛を乾かし始める。雹牙さんに触って貰うのはどこでも、何でも、気持ち良い。
杉田さんに腕を掴まれた時とか、元彼に触られた時とか、何度もそう思ってるけど言ったことはない。けど、顔には出てるのか最近は撫でられる回数もますます増えてる。
前から割と妹扱いだったけど、最近は市ちゃんにしない分を私にしてるんじゃないかと思えるほど構ってくれる。
乾かして貰うのが気持ち良くてうつらうつらし始めた思考で、取り留めもなくそんなことを考えてたら結局寝落ちたらしくて気付いたら朝だった。
ちゃんとベッドに放り込まれてるから雹牙さんが運んで寝せてくれたんだろうなぁ……と、疑問じゃなく確信を持っちゃうくらいには面倒を見て貰っている気がする。