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甘い貴方を見つけるまで【佐藤流司】裏

第4章 Sugar4


「眠い・・・。」


「ほら、早く食べて行きなさい!時間ないんじゃないの?」


実家に帰ってきた。
元々、実家にいたからね。
ひとり暮らしなんてしたくない。


ここにいると、朝ご飯を作ることもない。
起きた時には、もう出来てるし。
大好きな彼に作ることも、寝起きが悪い彼の物騒な言葉を聞くこともない。


「うっさい、って言われたい。ぶっ殺すって言われたい。」


「は?・・・あんたなに言ってんの?そんな趣味あったっけ?」


バカじゃないのって顔で言ってくる、母を睨む。


「流司さん・・・。」


「もう!1ヶ月経つのよ!?次の恋しなさい!」


「そんなすぐ、次なんてムリ!お母さんのバカ!」


ご飯を食べるのを途中でやめて、急いで家を出た。


もう、1ヶ月経つんだなー。

あれから、流司さんとは一度も会っていない。


会いたい・・・。


1ヶ月は好きを余計積もらせるだけだった。


「なーにしてんの?」


「っ?!」


聞き慣れた声。大好きな声。
それなのに、久しぶりな声。


「お、お久しぶりです・・・。」


「すげー他人行儀。」


久しぶりに見る、笑顔。
八重歯を見せて、はははっと笑う。


「これから、お仕事ですか?」


「うん。今まで通りでいいから。そんなんやめて。」


「・・・うん。」


好きだよ。


そう言ってしまいそうになる。


辛くない道なんてきっとなかった。
お互いそんなのは、わかってた。
でも、付き合ってて辛いのはもっと嫌だった。
私も貴方も。

どうして、お互い素直になれなかったんだろう。
素直になれてたら、こんな結果にはなってなかったんだと思う。


「もしかしてさ、麻璃央くんと付き合ってる?」


「え?どうして・・・?」


「なんかそんな感じがしただけ。」


「付き合ってないよ。まだ、誰かと付き合うとか考えられない。」


「俺も。」


そこで、お互いの言葉が止まる。
この沈黙が嫌だ。
前は、この沈黙すら愛しかったはずなのに・・・。

いくらか経ったあとに、彼から喋った。


「そろそろ行く。」


「うん、私も。バイバイ。」


「うん。」


バイバイっていう言葉が嫌い。


大っ嫌い。


お互い反対方向に、足を向けて歩き出した。
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