第3章 Sugar3
「心羽・・・。」
そう弱々しく呟いて、ゆっくりとこちらに向かってきて、私の太腿に顔を埋めた。
「流司さん、大丈夫?」
すぐそこにある彼の頭を優しく撫でた。
相当酔ってるな、これ。
いや待って。
流司さん、私さっきちゃんと見たよ。
口の端から、食べたものとか飲んだものとか戻したものが溢れてるの。
付けたよね、絶対。
私の太腿に付けたよね。
首を左右に降って、擦り付けてるよね。
「流司さん、ちょっと退けようか?」
「やだぁ・・・。」
だから、ここでデレ出すな。
流司さんの酔っ払い最高かよ。
いや、そんなこと思ってる場合じゃない。
そんな擦り付けてたら、流司さんのキレイなお顔に付いてしまう。
もう、付いてるかもだけど・・・。
「君たち、もしかして別れてない?ドッキリだった?」
今、この状況で聞くことなんですか、つばささん。
流司さん大変なんですよ。
「ちゃんと振られましたから。それよりこれ、どうにかして下さい。流司さんの顔が汚れちゃう・・・!」
「自分の太腿より、流司くんの顔なんだ。」
そこで笑ってないで、助けて下さいよ、小越さん。
他のみんなも、笑って見てるだけだし。
「ねぇ!俺は!?俺はどうしてくれんのっ!?なんで誰も助けてくれないのっ!?泣いちゃうよっ!?」
「え?泣いていいですよ?ちゃんと写真撮ってあげますんで。」
「いや、撮んないでよ!」
盛大にかけられた麻璃央さんのことはみんな、気にも止めてないみたい。
だから、私はちゃんと構ってあげる。
「心羽ちゃん怒ってるでしょ!?」
「別に怒ってませんよ。みんなの前でキスして、でもほんとはしてなくて、流司さんをからかったことなんて、ちっとも。これっぽっちも。ちなみに、流司さんに迫られてたことも。」
「え、してへんかったんや・・・?」
「やっぱ、怒ってんじゃーん!」
そこで、呟かないで下さい、鳥越さん。
「妬いた・・・?」
顔を上げて、目をキラキラさせて、こちらを見上げる流司さん。
目じゃなくて、口元をキラキラさせて。
いや、酔っ払ってて、そんな姿でも天使ですか、貴方は。
これが、素だったらなぁ。
別れてまで、好きにさせないでよ・・・。