第3章 Sugar3
「来んなよ、バカ。」
「バカなことくらい、わかってるよ。」
そうだよ、私はいつも貴方のことになると、ありえないくらいバカになるんだよ。
彼が私の頬に手を添えて、親指で唇に触れ、肩に頭を乗っけた。
「麻璃央くんからのキス、どうだった?・・・嬉し、かった?」
声、震えてる。
バカ、いつもの流司さんを見せてよ。
そんな弱いとこなんて、今の私に見せないで。
ほんの少し前だったら、飛び跳ねて喜んでたかもしんないけど、今の関係になってそんなとこ見せられても、どうしていいかわかんないよ・・・。
「してないよ。キス、してないよ。」
「え・・・嘘。」
「嘘じゃない。」
あーどうしよー、ヤダって言いたい、別れたくないって言いたい!
バイバイなんてヤダって・・・。
こんなにも好きなのに・・・どうして・・・?
「麻璃央さんのいたずらだよ。」
「・・・そっか。あいつ、俺で遊びやがって・・・。」
「前も、機嫌悪い流司さんで遊んでたもんね。」
あの時はまだ、楽しかったな。幸せだったな・・・。
涙が溢れそうになる。
でも、泣いちゃダメだ。
私たちは、この道を選んだんだから。
「心羽、幸せになれ・・・なんて、かっこいいこと俺、言えないから。」
「私も言えない。・・・だって、流司さんと一緒にいること以外、幸せなんて見つからないもん・・・。」
「・・・も。」
「え?」
「なんでもない。戻るか!麻璃央くん、シめに!」
「うん!」
流司さんが何を言ったのかわからないけど、物騒なことを言って、いつもの彼に戻ったから、笑顔でうんと返した。
「まーりーおーくーん、あっそびましょー!」
真っ黒な笑顔をした流司さんが、お酒を口に含んで、麻璃央さんに迫った。
デジャヴ・・・。
「逃げんな!」
口に含んだお酒を飲んで、叫んで、またお酒を口に含んだ。
前と同じように、逃げ回る麻璃央さんを捕まえた。
「流司さん早く!」
麻璃央さんを、ガッチリホールドした。
「もう!お前らまじなんなのっ!?」
「流司、いけー!」
「やれやれ!」
今ここにいるのが、みんなで良かったと心から思った。
こんなにも辛いのに、楽しいって思えるから。