【S】Moebius Ring~目覚めたら執事!?~
第18章 異変
「じゃ、次ねっ」
「あ、はい」
「これ見たら絶対思い出すわ!」
「どれどれ」
「…やっぱりダメ。高校の時のを先に…」
「…」
俺の記憶を取り戻させたいのか、させたくないのか。自身もわかってなさそうな美羽の言動。ただひとつブレないのは、その筋金入りのシスコンぶり。
「ねっ。可愛いでしょ!姉様が体育祭でチアやった時の!」
「お似合いですね~」
姉の写真を誇らしげに見せる美羽は、本当に素直に感情が表に出てる。そんな彼女を、俺も素直に可愛いと思う。
姉がものすごく好きだという、まっすぐな感情。その様子が微笑ましいなって。
ただ、そう思ってただけだった。
実際俺は姉のことは見ず知らずなわけだし、確かにタイプだけど、ここ数日直に接してきたのは美羽の方だから。どちらかと言えば彼女のイキイキした様子を温かい眼差しで見守ってる執事的立場にいた。
なのに
「あ~…懐かしいっ。これ三人でこっそり夜抜け出して怒られた時のよ(笑)」
「…」
「パワースポットだと思って行ったら実は心霊スポットで…。絶対泣いてたわよね、櫻井。結構ビビリだもんね~?」
「…な、何をおっしゃいますか、お嬢様?」
「フフフ。誤魔化したって無駄なんだから。私は姉様や櫻井と違って、こういうのゼンゼン怖くないしね~♪」
「…」
まったくもって記憶にはない。
なのに、こうして写真に写っている自分がいる。
それを眺めていたからじゃないとは思う。
徐々に
過去の写真にさかのぼっていくほど増えていく
さっきの違和感。