【S】Moebius Ring~目覚めたら執事!?~
第12章 刻まれた文字
って阿鼻叫喚してる場合じゃないな。
櫻「…人の貰って嬉しい?」
男「え…それは…」
さすがに学習したようだ。彼の給料何十年分かもわからないそのネックレスも、今回彼が受け取るのはナンセンス。金額じゃない。デザインでもない。今彼に必要なのは、むしろお金で手に入らないもの。そして彼が欲しいものも、また同じ。
美羽「…そう。でも、そうよね。自分で用意したものの方が伝わるわよね」
櫻「ええ」
それはきっと、美羽自身が一番わかっていること。だからこうしてここに、この指輪がある。値段の付けられない、たったひとつだけの指輪が。
松「ちなみに、美羽お嬢様は何貰ったら嬉しいンすか?」
美羽「え?」
櫻「そうですね。同世代の女性の心理として、参考までに」
美羽「私?私は、そうねぇ…」
うん。聞くんじゃなかった。
って、ここにいた三人全員が思ったと思う。聞いた相手が悪かった。…もとい、ちょっと特殊だった。
櫻「…古代植物の、破片…」
美羽「そう♪先日教授に見せて頂いたの!もーすっごいんだから!大興奮よ。それもレプリカだったんだけど、古代の隕石の欠片の中に植物の種子らしき組織片の一部が見つかってて、そこからDNAを採取できれば今の世に――…ナンタラカンタラ~…」
三「…」
さて。
櫻「そろそろティータイムの時間なんで、私はこれで…」
松「あっ、先輩ズルイ!」
美羽「ちょっと。聞いてるのあなたたちっ。ここからが面白いところなんだからっ!」
三「き、聞いてまぁ~~っす」
美羽「それでねっ?実際はアメリカの研究所が――…」