第11章 実況見分

当日の状況を、美羽の部屋で実際に本人に再現してもらった。彼によると、引き出しは故意に開けたわけではなく、もとからちょっと開いていたらしいのだが…。

美羽「そんなはずないでしょう！ちゃんと閉めたわよっ」
松「ホントですかぁ？」
美羽「絶対閉めた！…アンタどっちの味方！？」
松「正しい方？」
美羽「なっ…。じゃ、私が嘘言ってるとでも言いたい――」
櫻「ま～ま～ま～。落ち着いて下さいって。…お嬢様」
美羽「なによっ」
櫻「ちょっと、実際やってみて頂けませんか」
美羽「え？…何を？」
櫻「引き出しを閉めるのを？」









美羽「櫻井まで私のことバカにしてるのッ！？」
櫻「いえ、決してそういう訳では…。ただ、どうせなら忠実に再現した方が、お嬢様にも納得してもらえるのではないかと」
美羽「…。いいわよ。やればいいんでしょっ？」
櫻「お願いします」

タンスの前に立ち、指輪ケースを中にしまい、取っ手に手をかけて…

す、すす～…

ﾊﾟﾀﾝ


櫻・松「…」
美羽「どう？ちゃんと閉まってるじゃない」

…いやいや。

あなた、いつもそんなソフトな閉め方じゃないでしょうっ？