bond of violet【文豪ストレイドッグス】
第5章 明い光
「…終わりました、芥川さん」
横たわる男を背に、携帯電話越しの男へ告げる。
『ご苦労。直ちに合流しろ。』
「はい。」
携帯電話をパチンと閉じると、もう一度男達を振り返る。
一人も、傷つけてはいない。
ただ、今回行った仕事のことを、キレイさっぱり忘れてもらっただけ。
横たわり平和に眠る顔を覗き込み、ロクサーナは思う。
若しも私の力が無かったら、この人達はきっと、芥川さんに。
「…良かった…。私にも出来ることが、あった。…でも……これで良かったの…。」
ロクサーナは、少し微笑み、下を向いた。
自分の行動が、ポートマフィアの動きが、正しいなんて思えない。到底、お天道様に顔向けなんて出来ないだろう。
物心着いた頃にはもう日常であった世界に疑問を持ち始めたのは、ほんの最近だった。
胸をぐっと抑え込んだあとその事務所を出る。
日が眩しく彼女を照らす。
赤の瞳を細めて、下を向く。
「あの、君は?」
「え?」
門を出たところで声がした。
「あ」
顔を見て、ロクサーナは気づく。
この人は、さっきの彼の。
『武装探偵社』の、人。
谷崎…と言ったか。
優しい笑顔の、彼の居場所の。