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砂漠の月

第2章 砂漠の月71~150


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とある放課後、市の部屋で部屋主と月子はせっせと手を動かしていた。
時はもうすぐクリスマスで市と月子は秋ごろから少しずつプレゼントの準備を始めており、それが完成間近となっていた。

「市先輩、もう完成ですか?」
「うん、あと仕上げして……家で手洗いだとバレるからクリーニング、かしら?」
「ですね……」
「月子ちゃんも完成?」
「はい! 同じく仕上げしてクリーニングに出すだけです」

手元に視線を向けたままの会話は、仕上げが完成するのと同時にピタリと止まり顔を見合わせた二人は満足気に微笑む。
どちらも大判のストールだが、色味は男性向けで渋い色の毛糸が使われている。
月子の方は透かし編みが施され、女性が使っても違和感がない作りだが市の物はシンプルでグラデーションが細かく作られている。

「使ってくれるかなぁ……?」
「大丈夫よ。それより、プレゼントはこれだけにする?」
「あ……うーん、何か買ったものも付けたいんですけど一人では出掛けられなくて……」
「なら、今から一緒に行きましょ」
「えっ?」

完成した物を丁寧に畳み、袋に収めながら提案されて月子が驚く中、市は決まりと言う風に帰宅していた黒羽を捕まえて車を出してもらうと月子とデパートへ繰り出した。
上から下まで順に店を覗きながら二人は香水のコーナーで立ち止まると置いてあるボトルを眺める。

「トワレとか、あんまり見ないですけどボトルとか可愛いんですね」
「そうね。それにこれ……」

テディベアを象ったボトルを手にとって楽しげに見ていた月子が零した言葉に頷きつつ、市はクリスマス向けの宣伝文句を指差して月子を誘う。
そこには、密かなペアルック、カップル香水という謳い文句で対になっているらしい香水の瓶が並んでいた。
月子と市はそれを見て少し考えるとこくりと頷き合い、お互いに選び始める。
黒羽は市が連絡したら迎えに来る事になっており、今はそばに居ないので時間を気にすることもない。
真剣な表情でテスターを紙に振り掛けて香りを試す。

「あ……これがいいかも」
「私もこれがいいわ」
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