第2章 二ヶ月目の戦い
「ああもう、どうすればっ!!」
と頭を抱えたところで。
「ああもう、今月も大赤字だぜ。あいつら~!!」
という声が聞こえた。
「ん?」
見ると、開店前とおぼしきオデン屋台。
そしていつぞやの『お兄ちゃん』が頭を抱えていた。
そこでチビ太さんは私に気づき、
「あれ? あんた、確かこの前の晩に……」
…………
夕刻。仕事始めのハイブリッドおでん屋台。
私の話を聞いたチビ太さんは、目を丸くする。
「はあ!? あいつらの妹ぉー!?」
「松奈と申します。松野家でお世話になっていますので、以後よろしく」
ぺこっと頭を下げるが、
「いや、あいつらとは昔からのつきあいだが、そんな話、聞いたことねえぞ!?
あんたは全然似てねえし、第一、あそこのおやっさんは浮気するような人じゃねえ!」
「世の中には色々と事情があるのですよ」
「いや事情って……」
と、腕組みした。そしてしばらくうなって、切り替えたようだ。
「まあいいや。面倒くせえ話は苦手だ!!
あいつらの妹なら遠慮はいらねえ! 食ってけ、食ってけ!!」
と上機嫌で私に椅子を勧める。
「いえ、お酒は飲めませんし、そもそもお金を持ってませんので」
「心配すんなって! あいつらのツケにしとくからよ!!」
そこ、おごってくれるんじゃないのか。
…………
時間がゆっくり過ぎていく。
お母様はパートで今日は遅いし、一松さんたちが探しに来るほど遅い時間でもない。
美味しいなあ、おでん。ハシが止まらない。
お夕飯前だというのに、お腹がいっぱいになりそう。
「なるほど、ツケがそんなに高額なことになっていたのですか」
「昔なじみだと甘い顔してりゃコレだ。何とかしてほしいぜ!!」
私の隣に座り、チビ太さんは延々と愚痴ってくる。
「あの六つ子ときたら、昔から六人で遊び回っていてイタズラばかり……」
合間合間に聞くおそ松さんたちの子供時代は、にぎやかで、毎日がキラキラ
していて、とても楽しそうだった。いいなあ。うらやましいなあ。
……そんな幸せな子供時代を送りながら、全員が全員、性格がねじくれた社会不適合者に育ったとこが現代社会の闇と言えよう。