第6章 ある夏の一日
「よう!江にヒカリ。お前らよく来たな!」
注文するものが決まってベルを押すと、凛さんが来てくれた。最初は違う店員さんが来ようとしてたけど、凛さんがそれを呼び止めて代わっていた所を見ると、忙しくしながらも私達が来たことにちゃんと気付いてくれてたみたい。
「お兄ちゃん!制服姿、様になってるじゃん!」
「へへ、まあな」
去年の文化祭の執事服姿もカッコよかったけれど、ファミレスの制服姿もすごくカッコいい凛さん。周りの女のお客さんが、凛さんのことをチラチラ見てる気がするのは、きっと気のせいなんかじゃないだろう。
「ヒカリも遠いのに悪かったな」
「い、いえ!凛さんこそお疲れ様です!」
「おう!・・・さ、話はこれぐらいにして。ご注文はお決まりですか?」
砕けた話し方からいきなり口調ががらっと変わる凛さんに少しドキッとしつつも、私はさっき決めたメニューを告げる。
「えっと、チーズハンバーグカレーとミモザ風サラダ、やみつきポテトと唐揚げ、それにかき氷パフェのソーダ味をお願いします」
「で、それがヒカリちゃんの注文で私は・・・」
「今の全部ヒカリのオーダーかよっ!!江と二人分かと思ったわ!!!・・・ほんっとお前、よく食うなあ。ははっ!」
凛さんから鋭いつっこみが入って、また顔が熱くなってしまう。だってたくさん歩いたからおなか空いちゃったんだもん・・・
「う・・・す、すいません・・・」
「いーや、別にいいと思うぜ?それにたくさん食ってもらったほうが俺達は嬉しいしな」
ニカッと笑ってくれる凛さん。本当に私の周り、いい人達ばかりだなあ・・・
「よし、そんじゃちょっと待っててくれよな。混んでるけど中で宗介が頑張ってくれてるから、そんな時間かからねえと思う」
江先輩も注文を終えて。凛さんの口から出た『宗介』という単語にイヤでも身体がぴくっと反応してしまう。
「あ、あの!凛さん!」
「ん?まだ何か食うのか?」
「い、いえ、違います!あ、あの・・・忙しいのはわかってるんですけど・・・そ、宗介さんに少しだけでも会いたくって・・・」