第9章 あの子。【青峰 大輝】
あの子。
いつも傍にいる、あの子。
まぁ‥‥これは所謂、ジェラシーってやつだろう。
だけど、私に嫉妬なんか抱く資格はない。
まだあの人に近づけてすらいない、小心者なんだから。
─────---
「はぁぁぁぁぁぁ‥‥」
夏。
青春真っ盛りと言うべき夏に、
私は何をやっているんだろう‥‥。
「うっ、スミマセン‥‥」
「なっ、いや、なんで、謝っ、いや!
私がバカなのがいけないんだよ!?
こっちこそ、付き合わせてごめん‥‥」
ぺこぺこと頭を下げる桜井くんに頭が上がらないのは私の方。
部活の後や、その前に、こうやって勉強付き合わせちゃってるんだから。
「謝らないでください! 拙い説明で申し訳ないです‥‥」
「こっ、こっちこそ‥理解能力低くてごめん‥‥」
あぁもう、どうしてそんなに優しいの?
頭の悪さって、人に迷惑かけるときあるから嫌だよね‥‥。
「今回は解けるようになったから成長しましたよね」
「ほんとにね! 桜井くんのおかげだよ!」
「ぼ、僕なんて! そんな!
~~っ! スミマセン!!!!」
「こ、こっちこそすみません!!!!」
「‥‥‥‥何やってんのお前ら」
くっ、誰だ!
今せっかく日頃の感謝を桜井くんに伝えようと‥‥‥
‥‥‥‥!?!?!?!?
───その時、My Godが降りてきた。
あぁ神様‥‥こんなタイミングで登場させても、私何も出来ません‥‥‥。
白目をぱちくりさせて(白目で瞬きが出来たのはこの時が最初で最後だった)、呼吸すら一瞬止まっていた。
──夏。
そう、夏。
青春、真っ盛りの夏。
遠くでセミの声がする。
たった1週間で儚く散るその人生‥‥美しい。
何言ってんだ私は。
「‥‥‥? なんだこいつ?」
「え? あれ!? 倉永さん!? え、な、え!? 大丈夫ですか!?」
あぁ、桜井くん。
きっと女子だったらしないような顔に、驚いてるんだろうね。
だけどね‥‥‥だけど私には、女ということよりも大事なことがあるのよ。
──こんな所で、本当にこんな所で会えるなんて。
「‥‥‥Oh,my God.」