第8章 毎日恒例 【黄瀬 涼太】
付き合って3ヶ月が経つ。
「~っ、なんでそんな風に言うのよ!」
「ユキミっちだって人のこと言えないじゃないッスか!」
・・・私たちは、毎日のように喧嘩をしている。
倦怠期とか、そういうことじゃない。
勿論、黄瀬のことは出会った時から好きなままだし、デートだってよく行く。
だけど・・・喧嘩は絶えないのだ。
「っていうか! この前も同じような事になって結局ユキミっちが謝ったッスよね!?」
「あれはあれ! これはこれ!!」
今の喧嘩の原因っていうと・・・あれだ。
よかれと思ってやったことを、黄瀬がこともあろうに侮辱してきたのが原因。
世話焼き、とか、お節介、っていうのは分かってる。
だけど、私だって力になりたい。
なのに・・・。
「ちょっと度が過ぎて小姑みたいな時あるんスよ、ユキミっちは!」
「こ、小姑って・・・!!」
ひ、酷い・・・。
友達にも「親みたい」って言われたことはあるけど、こ、小姑って・・・。
「そ、そこまで言うことないじゃない!!」
「あ!? どこ行くんスか!!」
「着いてくんな!!」
なんだか【小姑】っていうワードが心に突き刺さったのか、目尻が熱くなるのを感じた。
黄瀬の前で泣いたことは一度もない。
というか、涙を人前に出すこと自体、好まない。
黄瀬の声が後ろから聞こえてくるのを無視して、大股で進む。
泣きそう。
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「・・・また喧嘩かよ」
「が、ざ、ま、づ~!!」
予想通り日誌を書いていた笠松に、迷わず泣きついた。
最初の頃は親身になってくれた彼も、今じゃ軽く流してしまう。
「またお前が余計なことしたんだろ。
・・・はぁ」
「よ、余計なこと・・・だけど」
「男はな、『女に何かしてもらう』っていうのが嫌なんだよ」
「・・・そういうもんなの?」
日誌から顔を上げて、真剣な目を向けられる。
「プライドってもんだよ。男バスマネならそれくらい知っとけ」
「っいた!」
真剣に聞いていたと言うのに、デコピンをお見舞いされた。
なにげに痛いし!!
「・・・プライドか」
「お前にもあんだろ。みんなある」
「うーむ・・・・・・笠松は?」
「は?」
「笠松のプライドなに?」
参考にしようと思って訊いてみたけど、頼りの綱は考え込んでしまった。