第2章 明日またね。 【宮地 清志】
「・・・あの時は、ごめんなさい」
「あ? ・・・あぁ、あれか」
思い出したように、鞄を漁る先輩。
その手には、マフラーがあった。
「あ・・・」
「投げつけてんじゃねぇよ。危ねぇだろ」
グルっと首が温かくなる。
フワッと先輩の香りがした。
「ふふっ・・・」
「な、何笑ってんだ」
「・・・先輩の匂いがするんですよ」
マフラーに顔を埋めて、めいいっぱい空気を吸い込んだ。
3月の体育館。
朝の冷凍庫のような空気じゃない、春の香り。
「・・・先輩に会えてよかったです」
でも、これでお別れ。
次はいつ会えるのか分からない。
「・・・泣くな」
「泣いて・・・・・・ますね・・・っ」
「ふっ・・・なんだそれ」
足音が近づいてきて、後頭部に手が回る。
ぐいっと引き寄せられたら、もうあっという間に目の前だった。
「っん・・・」
初めての異性からのキス。
ちゃんとしたキスだった。
「・・・っ次・・・いつ会う」
「はっ・・・次・・・ですか?」
「・・・なるべく早く会いたいけどな」
「っ!!」
珍しい宮地さんの赤い顔。
それが移って、こっちまで熱い。
「・・・笑うな」
「・・・可愛いんですもん」
うむ、可愛い。
私にとっての天使だ。
「・・・ユキミの方が」
「あー、言わなくていいです!」
「可愛い」
にやっと歪む口角。
その先を言われるのが嫌なのを分かってて、わざと。
「っ・・・意地悪い!」
「まぁな。男はそんなもんなんだよ」
おでこ。
頬。
鼻・・・etc・・・
顔中にキスの雨だった。
くすぐったい・・・。
「・・・や、やめ」
「無理だな」
「っ!」
逃げようとしても、後頭部の手がそれを阻止する。
・・・ほんと・・・意地悪だ・・・。
「・・・明日、会えるか?」
「明日? ・・・何もないですけど」
「じゃあ、明日」
「い、いきなりですね」
「毎日でも会いたいくらいだ」
「っ!」
「・・・すぐ赤くなんのな。お前」
「───余計なお世話です!!」
私だって、毎日宮地さんに会いたいです。
END