第1章 ◆Fly high◆(執事サイド)
お嬢様の嫁ぎ先から使用人が派遣されてきたのは、数週間ほど前のこと。結婚後お世話して下さる方々なので、もちろんこちらとしても大歓迎だ。
式までの約三ヶ月の間、彼女らも自分の仕事があるのでビッタリというワケにはいかないが、時間の都合がつく限り、実際に入って見てもらうことになった。
もちろん、花嫁である美月の行動パターンやクセなどをあらかじめ知っておきたい、という理由で。
だが
それだけではなかった。今回式が早まった原因はむしろ、それでない方にある。
そう
美月と俺との関係を勘ぐってのこと
…だと俺は思ってる。いや、ほぼ間違いないだろう。おそらくそのテの情報があちらの発言力のある誰かの耳に入り、何か間違いがある前にとっとと式だけでも挙げてしまおう…ということなんではないか、と。それ以外、こんな半端に無理矢理時期を早めた理由が見当たらない。
派遣されてきた二人は、見た目こそとぼけた漫才コンビのようだったが、その実かなりベテランで優秀な使用人だと聞いている。ま、自分のところの御曹司の花嫁を世話することになるのだから、当然っちゃ当然だが。むしろそうじゃなきゃこちらだって安心して任せられない。