第1章 ◆Fly high◆(執事サイド)
そして
どう逃げ切るか思案していたさなか
八年ぶりにその素肌を目の当たりにして、俺は…
まあ、あり得ないことだよ。ホントに。それもあろうことか、結果だけみたら避妊もせずにそのまま中で…。
いや、あり得ない。だって最後とは言え、別に今生の別れってわけじゃないのに、だ。俺の常識と理性は一体どこへ行ってしまっていたんだ?どれだけ懇願されたからって、たとえ彼女の方からにしたって、アレじゃホントに単なる鬼畜…
…まあ、いい。いや良くはない。まったくもって良くはないが!やってしまったことは、もう、どうしようもない。
それに、俺自身ホントは気付いてる。あの時、俺は確かに動揺してたし、驚いてもいた。
でも
理性はあった。冷静に、あの状況を客観視してる自分も、確かにいたんだ。
彼女を力ずくで止めることもできたし、俺が部屋を出ることだってできた。でも、俺はそうしなかった。欲に飲まれて…でないことは、自分が、一番わかってる。
最悪、万が一、昨夜の行為が発覚しても、俺が無理矢理ってことにすれば彼女の名誉は保たれる。…最悪。
ま、彼女が口外することはないだろうし、誰かに知られることもないと言えばない。
ただ、可能性があるとすれば
それは
奇跡が起きた場合。
ふたつの種が融合し“ひとり”になった場合、だ。
そうなれば、この事実は否応なく曝される。誰の目にもはっきりとわかるかたちで。