第1章 ◆Fly high◆(執事サイド)
「…ハァ…」
バカなことをした。それは重々承知の上。すべて、承知の上で、俺は…
『抱いて』
正直、結構な衝撃だった。
近いことは多少予想はしていた。というか、求められなくてもこちらからハグくらいはさせていただこうかとは企んでいた。…最後だし。でも、せいぜい、いってもキスくらいかなって。
その言葉が本気だってことはすぐにわかった。いつもの悪い冗談や悪戯でないことも。だからと言って、さすがに承諾できる内容ではない。そこまでの準備をしていなかったとかいう以前の問題。たとえ本当に最後の“一生に一度のお願い”だったとしても、だ。
戸惑っていた。内心、かなり動揺していた。
そして
『もう二度と頼まないからっ!』
これも実は相当ショックだった。
本当にもう、最後なんだと
あなたの
当たり前のように一番傍にいて
振り回されるこの日常が
本当に終わってしまうのだと
…勝手なものだな。
自身、言い聞かせるように何度も「最後」って言葉を口にしておいて。