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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第22章 キミの絶望という名の希望に微笑む




たまたまだよ、と。
狛枝は前置きをして、この事件に関わる重要な証言を逢坂に話して聞かせた。


「昨日、妙な胸騒ぎがして校舎を夜遅くに歩いてたんだけど」
『…え、なんで夜遅くに校舎に残ってたんですか?』
「あぁ、違うよ。「この時間」に、「この場所」へ行けば何か良いことが起こるんじゃないかなって気がすることが、ボクの場合はよくあってね…昨日はたまたま「夜遅く」、「学校の校舎」へ行こうって気になったんだ。たまたま校舎の窓の鍵が開いているのに気づいて、たまたま守衛さんに鉢合わせることなく心ゆくまで散歩してたんだけど」


そこで、たまたま。
狛枝は王馬を見かけた。
王馬は、彼らしくない大きなボストンバッグを肩にかけていたという。


「だから気になって声をかけたんだ。ボクが今日ここに来たのは、彼と会うためだったんだって直感でわかったし、何よりそんな時間に校舎をうろついてるなんて、不自然だからね」


ーーーこんな夜中に会うなんて奇遇だね!何してるの?
ーーー…ただの散歩だよ。そっちこそ、夜中に何してるの?
ーーーその鞄、やけに重そうけど…もしかして何かの邪魔をしちゃったかな?
ーーーあぁうん、実はさ


















ーーー明日、校舎を爆破しようと思ってね













『…まさか』
「信じたくないだろうけど、本人が言ってたからね。そのあと笑って「嘘だよ」って言ってたから、まさか本当にやるとは思ってなかったんだけど…」


あれだけキミを溺愛してた彼が、こんな大掛かりな爆発を見過ごすはずないよね。
狛枝はそう補足して、言葉が思い浮かばずに黙ったままでいる逢坂を暗闇から見つめ、囁きかける。


「それに、彼とボクは似てるんだよ」

「…好きな人に焦がれて…恋して、愛して」

「一方的に愛して愛して愛して愛しても足りなくて」

「虚しくて苦しくてそれでも愛さずにいられなくて」

「なにもかも手に入れたくて、めちゃくちゃにしてやりたくて」

「その細い喉を締めてでも…キミの全てが欲しくて」






いっそのこと





「キミを事故に見せかけて殺して…っその遺体から四肢を切り離して、自分の身体に埋め込んで、本当にキミとひとつになりたいなんて劣悪な感情を彼が抱いていたって、ボクには何も、おかしくなんてないと思うよ…!」
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