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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第21章 生かせ生きるだけ恨まれる




もしも自分に才能が無かったら。
考えるだけで恐ろしい。


「博士?コーヒーが冷めてジマ、イますよ」ーーー《Question》Program6845.btjg952


家族も友達も才能も何もない。
そんな人間が身一つで生きていくには、この国は惨たらしいほど潔癖過ぎる。
もしも、私に機械工学の才能が無かったなら、一体どんな手を使って、私はこの世界を生き延びてきたのだろうか。


『…あとでいい。それよりキーボ』
「ザザ……はい、どうしました博士」ーーー《Answer》Program135.atjg4295
『……ノイズが混じっているね』
「やはり、小規模のシステムエラーが起こっているようです。考えられる原因としては、今日体育祭の紅白対抗バスケで弐大さんとぶつかったことでしょうか」ーーー《Opinion》systemーーーーamt458error..pjag4789error
『点入りそうだったのにね。さぁ、横になって』
「……博士?」ーーー《Question》Program29.btjg4295
『ん?』
「今日は…王馬クンは来ないんですか?」ーーー《Question》Program39654.btjg42952ーーsystem error
『……んー、気が向いたらねーって言ってたから、用事が済んだら来るんじゃないかな』


キーボに繋いでいるコードを伝って、彼のプログラムコードがディスプレイに羅列されていく。
思考の伝達機能にすらシステムエラーが生じているのか、何かを考え込んだまま未だ横にならないキーボを眺めた後、逢坂はコーヒーへと視線を落とした。


(…なんか、違和感があるんだよな)


慣れ親しんだ我が家のラボ。
見慣れたはずのプログラムコード。
キーボの受け答え、行動、反応に至るまで、全てを「決めた」のは逢坂だ。
しかし最近、彼の言動に予想とのズレを感じるようになった。
彼には学習機能が備わっているため、合理的かつ効率的に物事をこなすようになることは想像に難くない。
けれど、原因はそこにはない気がしてならないのだ。


『…キーボ?メンテナンスをするから、横になって』


あっはい、と。
返事を返した彼は焦ったように駆け寄ってきて、指示通り身体を横に倒した。



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