第20章 あやまった探偵
羨ましい、と呟いた自分の言葉を反芻し、身体に力を入れて俯いている赤松さんの意図を察した。
(…え、抱きついていいよってことだよな…でも、そんなの出来ないし…あっ、でも天海くんがじっとこっちを見てる。断ったら断わったで赤松さんに失礼…なのか…?)
だって、あの天海くんがこっちを見て(はやくしろ)と言わんばかりの視線を送ってくる。
逢坂さん狛枝さんペア→確実に逢坂さんがケガをする
逢坂さん王馬くんペア→確実に王馬くんが勝ちにこだわる
逢坂さん最原ペア→確実に逢坂さんがのちのち困る
そんないくつものパターンを想像し、彼女を窮地から救った天海くんだ。
ダ最原が考えるようなことは既に考え済みに違いない。
てことは、やっぱり赤松さんの申し出を受けるべき?
「赤松さん」
「さぁ、張り切ってどうぞ!!!」
あぁ、赤松さんも変なテンションになってる。
きっとこの状況自体が恥ずかしくてたまらないに違いない。
「……えっと、じゃあ…」
「えっ?」
ぎゅっと、目を瞑って、最原が赤松を抱きしめた。
(……なんだか、良い匂いがする)
そう思ったのも束の間。
赤松が突然、アニメなどで猫が尻尾を踏まれた時のような変な声を発した。
「……え?」
「さっささ最原くんな、なに!?なに!?」
「えっ?なにって…」
「きゃあああ耳元で話さないでーーーー」
やばい、間違ったらしい。
焦って最原が離れると、やっぱり想像通り、周囲のみんなの目がとても冷ややかだった。
「…最原くん、たぶんさっきのは、赤松さんはなでなでして欲しかったんじゃないっすか?」
「へっ!?そうだったの!?ごめん!!!」
「い、いやいや…いやいやいやいや全然……全然…」
「どうぞって言うから!!」
「たしかに!!私の言い方が悪かったね!!ごめんね!!むしろありがとうございます!!!」
「うわぁ最原ちゃんってやっぱ変態なんだねー、こわー」
再び変態のレッテルを貼られそうになっている最原と、レッテルを貼り直そうとしている王馬を交互に見て、逢坂はクスクスと笑った。
「本当は、超高校級の探偵じゃなくて、変態なんじゃない?」
最原は焦って振り向き、声を張った。
「それは違うぞ!!!!」