第20章 あやまった探偵
「オレのせいで雪ちゃんが殺されそうになったのは計18回」
「今日のは、35回目」
「さぁ、ここで問題です」
「最原ちゃんがさぁ、中学で雪ちゃんと出会って」
「雪ちゃんと友達らしく、遊びに行ったり一緒に帰ったり、寄り道したり」
「赤松ちゃんとも仲良くなって、三人でいるようになって」
「高校に入ってからは天海ちゃんともいるようになって」
「四人で、何も知らずに普通の学生らしいことしてさ」
「………で?」
「オレはずっとずっと、彼女と言葉を交わすことすらなく」
「ガラスの向こうから雪ちゃんを見守ってきたわけだけど」
「最原ちゃんは知ってるの?」
「どうして今日が35回目なのか」
「オレの言葉の意味がわかる?」
「わかるわけないよね。最原ちゃんは「そっち側」の人間だもんね」
矢継ぎ早でありながら、途切れ途切れに聞こえてくる王馬くんの言葉。
僕は挑発的な彼の物言いに唖然としながら。
それでも頭を働かせていた。
計18回
この数字は定義されている
18回は、王馬くんのせいで逢坂さんが殺されそうになった回数
なら、35回は?
考えられる可能性は
(……逢坂さんはあのスポドリを「貰った」って言ってた。劇物の入ったスポドリを本当は逢坂さんが飲むはずで…35回は…)
「……35回は、王馬くんに関係のないところで逢坂さんが殺されそうになった回数だ」
つまりは、と。
僕が言葉を続けるのを遮って。
彼はまるで、こんなことは日常的な会話だと言わんばかりに、いつも通りの笑みを浮かべて、答えを言い切った。
「最原ちゃんさっすがー!超高校級の探偵なだけはあるよ!つまりはさ」