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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第17章 押しつけられた隠し事







最原、と。
キスをする直前、彼女が僕の名前を呼んだ。





「………っ…」






胸が引き裂かれるように痛んだ。
それでも、どうしても我慢ができなかった。
唇が触れ合う数秒間。
彼女は目を見開いた後、小さく身体を縮こませて、僕を突き飛ばしたりはしなかった。


「………。」


受け入れられたわけじゃない。
キスを終えた後、すぐに理解した。
見つめあった彼女の目に、ほんの少し恐怖の色が滲んでいたから。


「……ごめん。僕が、嫌いになった?」


どうしてこんな時でさえ、僕は気の利いた言葉の一つや二つ、思い浮かべることができないんだろう。
嫌いになったかどうかなんて、聞くまでもないに決まってるのに。


「…あのさ。王馬くんと、別れた方がいいよ」


僕はベッドの上に乗り出していた身体を戻して、逢坂さんを見つめた。
出来るだけ落ち着いて見えるように、荒々しく打ち鳴らされている鼓動の速さを、隠しながら。


『…勝手にキスしてきて、言うことはそれ?』
「……うん。それだけ」
『なんでキスなんか』
「…僕を見てほしくて」
『そんなの理由にならないよ』
「……そうかな」


じっと見つめ返すと、僕を睨みつけていた彼女は、パッと目を逸らした。


「……キーボくんのことは任せて」
『大丈夫、王馬にいてもらう』
「……なんで?王馬くんより、僕に頼む方が確実だと思ったから、僕に頼んだんじゃないの?」


彼女は、少しの間なにかを考え続けた後。
僕に、声をかけた。


『…今のこと、絶対に王馬に言わないで』
「…うん、わかってるよ」
『わかってない』
「わかってる」


キミがどれだけ、王馬くんを大切に思っているのか。
僕の言葉を聞き、逢坂さんはまた、僕への敵意を露わにした瞳で見つめてきた。
いつもの穏やかな雰囲気とは似ても似つかないその彼女の周りの空気を見て、僕は一瞬、息を詰まらせた。


「…本当、ごめん」
『………。』
「キスしたことは謝るよ。最低だと思う。…正直、自分からしておいて罪悪感に押しつぶされそう」
『そんなのは、当たり前だよね』
「…うん。本当にごめん。でも、キミに言ったことは間違ってないと思う。王馬くんとは別れた方がいい。逢坂さんは、闇社会の人じゃないもの」


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