第15章 変わり者の幸福論
血だまりに沈む彼女を見た時。
真っ白になった頭の中で、ただ一つ確信したことがある。
あぁ、オレ
遂に雪ちゃんを殺しちゃったんだ
「………ごめん」
ごめん、雪ちゃん。
彼女に駆け寄った天海が、その呟きを聞いて、ものすごい形相で振り返ったのを覚えている。
「ごめんってどういうことっすか…?」
「……ごめん……ごめんね…」
「……っどういうことなのかって聞いてるんすよ!!」
怒りに身を任せて、掴みかかってきた彼の顔を見て、思い知った。
(……あぁ、そっか)
自分が、こいつに譲ってやればよかったんだ。
身を引き裂かれる思いをしても、心が修復不可能になったとしても。
とっとと諦めて、身を引けばよかった。
「っおい、もめてる場合じゃないだろ!俺が先生を呼んでくるから、逢坂の側にいてくれ!」
「…ッ…逢坂さん、大丈夫っすか!?逢坂さん!」
駆け出す日向と、彼女に寄り添う天海。
自分は、何もできなかった。
「…雪、ちゃん…?」
彼女に触れようとして、天海に腕を弾かれた。
「王馬君のせいで、こうなったってことっすよね?」
「………。」
天海は苦々しげに王馬を見た。
その目には、逢坂への情と、王馬への怒りの感情だけが、じっと揺らめいていた。