第13章 鈍く冷たく赤い
「入間さんは、少し公衆道徳というものを学び直す必要があるわね。私は笑いを取る自己紹介や意外性のある自己紹介は出来そうにないから、先に言っておくわ。東条斬美よ、よろしくお願いするわね。私は超高校級のメイドとして、クラスのみんなに尽くしたいの。何か困ったことがあったら、何でも相談して頂戴ね」
窓際から数えて二列目の最前列に座る東条。
彼女は落ち着いたトーンで自己紹介を終える。
その背後に座っていた天海が振り返り、クラス全体に向けて柔らかい笑みを浮かべた。
「俺の名前は天海蘭太郎っす。旅に出てばっかなんで、あんまクラスにいないかもっすけど…ま、怪しいヤツじゃないんで、よろしくっす」
彼が前を向き直る直前、天海が逢坂を見つめた。
柔らかく微笑みかけられ、特に理由はなかったが、逢坂も笑いかけた。
その天海の背後、つまり、逢坂の左斜め前に座るのは、いつものように朗らかな笑顔を浮かべている赤松だ。
「私、赤松楓。よろしくね!好きなものは鍵盤で、苦手なものは自転車です。元々1-aでした、知ってる人が多いけど、初めましての人も仲良くしてほしいなぁ。私の自己紹介は以上です!」
お手本のような自己紹介を終えた赤松は、緊張したぁ、と少し火照っている頬を両手で押さえた。
赤松が席に着くや否や、春川の殺気から逃れようと、逢坂の左隣に座る百田が荒々しく立ち上がった。
「宇宙に轟く百田解斗だぜ!超高校級の宇宙飛行士っつー肩書きだけど、実はまだ訓練生だ!好きなものは観葉植物、嫌いなものは……よくわかんねーものだ!今日からいろんな奴にバンバン話しかけっから、覚悟しとけよ!」
逢坂は、コミュニケーション能力の高そうな百田の自己紹介に、小さく『おぉ…』と感嘆の声を漏らした。