第1章 ガラスの向こうの横顔
『いや、嫌いじゃないけど……オレのものって、オレの仲間って意味じゃないの?世界中連れ回すなら多分組織に入れってことでしょ?』
「それもいいねぇ。逢坂ちゃんが組織に入ってくれたら、オレの生活を隠すことないから朝から夜まで一緒に遊べるね!オレ友達とお泊まり会とかやってみたかったんだー」
『お泊まり会か…私もやったことないな』
「じゃあやろうよ!場所は逢坂ちゃんの家ね!」
『……うーん。でも私の家は困るな。未完成な子達が置いてあるし』
「それって逢坂ちゃんのロボットってことだよね。いいなぁオレにも見せてよ!ロボットってロマンがあるよね!」
(まずい、変なこと言わなきゃよかったか)
パッと顔を輝かせ、らんらんと王馬の目が光る。逢坂はその視線から目をそらし、購買への道を急いだ。
「ねぇ待ってよ逢坂ちゃん!遊びに行ってもいいでしょ!いいよね!」
『よくない、来なくていい』
「やーだよ、絶対行くからね。尾行してでも後つけてでもストーカーしてでも逢坂ちゃんの家に遊びに行ってやるから!」
『警察呼ぶぞ悪の総統』
「別に大丈夫だよ、オレ達は証拠残したりするヘマなんてしないもんね」
『っていうかさ』
『この手はいつ離してくれるの?』
立ち止まり、ぐいっと繋いだ王馬の腕を持ち上げる。
王馬は「え?逢坂ちゃんから繋いできたんじゃん。もうやめてよねー人前でイチャつきたいからってさー」と悪びれることなく、ようやく手を離した。
もしかすると、私はとても面倒な子に絡まれてしまったのかもしれない。
そんな嫌悪感を余すことなく顔に滲ませて威嚇したのだが、王馬はそんなの慣れっこなのか、楽しそうに会話を続けてくる。
『…ほら、しょっぱいもの買うんでしょ、行くよ』
「逢坂ちゃんって意外と人当たりいいよね」
『この顔のどこにそんな人当たりのよさが?』
「オレが鬱陶しいのに完全に追い払わないところとかさ。君も相当な嘘つきだよね」
逢坂は王馬を観察するように眺め、何も言わずに購買へと入っていった。
(…んー…何を考えたのかは読み切れなかったな)
残念、と呟きながら、逢坂のあとを追いかける。
その言葉とは裏腹に、王馬の表情は明るく、この先の期待に満ち溢れていた。