第92章 新たな神武(しんぶ)
ケイト『兄さん
にいさんっ
にいさ
――!!
っっっっっっっ』
言葉にした世界
しなかった世界…
それらは共通して――
押し殺すということを、自らに強いる運命(さだめ)にあった
【響く十二時のお告げ】
その解呪式の魔法を持つ相手…
それが、兄さんを殺した人だ
自分の想いよりも、兄の想いを取り、優先した
ケイト『兄は…
身分を捨て、立場を捨て、金の全てを、持ち得る全てを捨て、一切を捨てて…
私を守ってくれた
愛してくれた
大事にしてくれた
その人の願いなら…
どんな願いだって、叶えるさ
たとえ……なんだって………
(一緒に生きていたいから――大事にしたいから、それごと全部を―――』
割り切れてなんかはいなかった――
どんなに思っても、強く願っても…心だけは……無理だった
納得することさえも………
鼻水まで滴り落ちてゆく中で…慟哭が爆ぜる
バレないように……
ただ直向きに――真っ直ぐに―――
咽び泣きながら――――
そういうことが出来る人だからこそ―――原初の始祖神なのだと、言及されるきっかけとなった
『負うこと』の意味、その重要性を―――
だからこそ――
「癌達」は「堕落そのもの」、「軽薄」と形容される
『大事にすること』の真意を―――そこを履き違え、己しか見えなくなった末路も共に、照らし合わせながら
自らの非を否定することは
善人と認識する為に、現実を歪曲することは
それで犠牲になった人達の想いを否定することに繋がり
ひいては、そうしてでも守りたいと願ったものの犠牲、及び死を繰り返すことに繋がり
全てに悪い様に転がる、負の∞ループの根源と化す
だからこそ――避けなければならないことなのだと
人を見ない無理強いは
凝り固まった正当化は
恩人を虐殺するだけではない
自らをも死に追い遣るのだと
恩人だけでなく自らも周囲も全て死に至らしめるのだと――
だから―――1兆5000億年前に、全てが消されたのだと――――
地上に暮らす海底人として――エルは警鐘を続けた
化身化は出来ずとも、大事に慮ってくれた
最大限寄り添い、尊重してくれた友(ケイト)
その想いを負って――願いを叶える為―――
ケイト『なあ
幸せになってくれ
な!^^//
にしししっ』にっこにこ