第83章 剪定
声も上げず泣いた
だが心の叫びが、心からのつんざくような悲鳴が、聞こえた
ちゃんと居るよ、聞いているよ、そうつぶさに伝えるように、頬を優しく撫でた
皆も静かに駆け寄り、そっと頭を、背を、優しく撫でた
順繰りに代わる代わる、何度も、何度も…
しがみ付いたままのケイトに何も言わず、こちらにも抱き着けだなんてことも言わずにいた
そんな皆に、ケイトは順繰りに抱き締めて行った
大好きだからね、と―――
ああ
だが…忘れないで欲しい
皆も、君が大好きだよ、と―――
その言葉に、また、泣いた
心の傷は癒えない、されたことは消えない、無くなることは無い
決して―――
でも―――ここに居るよ
ただ――君の傍に居るよ
大事に想っているよ―――
私もだよ―――
返された言葉は、涙と共に吐露された
ケイトが紡ぐ言葉を、そっと受け止めて
僕等は優しく抱き締めた
しゃっくりが浮かぶ、嗚咽が上がる、息が出来るようになる(落ち着く)まで時間が掛かりそうだ
そんな想いとは裏腹に…縋ってくれる嬉しさを、ひしひしと感じながら、それごと抱き締めるように、腕の中に閉じ込めた
どんなつもりがあったとして――与えられた傷は消えない、癒えることも無い、ただそこに在るだけ、在り続けるだけ、その人の中からは決して消えない
だからこそ――大事にして欲しい
その中にある、一瞬、一瞬の尊さを
温もりを、二度と帰らない時を、二度と戻らない命を、瞬間を…取った行動を
たとえ何であったとしても
だからこそ…芽吹くんだろう
人は…命は…二度と戻らない、帰っても来ない
だから…大事にする
たとえ傷であっても……痛みであっても………何であったとしても
それが道となり、己という存在となる、『証』となるのだから―――だからこそ色づくのだから、自分という色となって、残っていくのだから…誰かの中に、時の中に、何かの中に、一瞬一瞬で、姿形を変えて
それを大事にするのではなく、背負うのではなく、無駄にする…
だからこそ、癌は何よりも罪深いんだろう…過ちを過ちと捉えず、繰り返すばかりで、全てを無駄にし続けてしまうから
それが全てなのだと、悟った…癌に説得が無駄なのも含めて
だが…君は諦め切れないだろうね
それにケイトは頭を振った
癌はもう見ない、諦める
と