第74章 融和
ベリアル「一つ、昔話をしようか…
これは私が旅の最中で聞いた話だ
動きたくても動けない母親がいた
子は、母の為にと思って沢山食べ物を盗んでは与えてきた
人から善意で与えてもらったものも…
感謝や申し訳無さ等抱かぬまま……」
ケイト「……どうなったの?」
ベリアル「死んだよ」
ケイト「!え?」←思わずベリアルの顔を見上げる
ベリアル「それに耐え兼ねて、母は自殺した
悪事をするのに人を理由にして、しかも正しいと思われた
悪事をする為のダシにされた、正しいと思う為の理由にされた、と言ってもいい
だがそうでもしないと生きられない
なら動けないなりに出来ることは…自殺だけだったんだよ」
ケイト「…子は…?」
ベリアル「死んだ」
フィン「…似ていないかい?」
ケイト「?何と」
フィン「……ベル・クラネルとウィーネの関係性さ」
ケイト「…へ?」
フィン「狂暴化したウィーネは、街を壊して回って、人を傷付けて回った
だが、彼女はそんなことを望んではいなかった。
寧ろ、止めて欲しかった。
にも拘らず、彼はその逆をした。
暴走を止めるのではなく、一緒になって暴れて回って、追従して、暴走の手助けをした。
ウィーネは、暴走する自分を止めて欲しかった。
周りは、皆を守りたかった。
選択の自由が無い。
選択の自由が唯一ある彼は、選択した…皆の想いを無視する道を
想いを汲むよりも、自分がその時やりたいこと、英雄像を優先した。
それで一番辛い想いをするのはウィーネ自身だ
周りから責められる、傷付いた人も多く増えた、私さえ暴走しなければと気にも病むだろう
彼が責められるのは私のせいだと、その状況をなんとかしたいと飛び出すぐらいにね…
ウィーネも辛い、周りも辛い
たとえ守りたかったのだとしても…肝心の『他の心』を見ていない
彼が守ったのは、他でもない…「自分自身」なんだよ
人の心を弄んだんだ、彼は
人を理由にして、自分しか見ずに…
好き勝手に扱ったことへの、当然の報いだとは思わないかい…?
人の立場に立って考えてみるといい
暴走した時どうして欲しい?
したくもないことを自分で止められない時、どうされたい?
急に暴れる人と遭遇した時どうして欲しい?
暴れる人が増えた時、どうされたい?
その答えが…君にとっての正解だろう」