第70章 新天地
フィン「…ケイト。
ねちっこく言ったことは、間違いではない。
そもそも…ねちっこく言うにしても、人から与えられた傷を抱えるものが、その人をいいように言われることで得る心痛、それを痛んだが故だ。
その痛み、苦しみを身を持って知っているからこそ、凄惨なことをしていると自覚させる為にだろう?」
ケイト「こっくり)…でも」
フィン「与えた傷、その傷口へ更に塩を振り掛け、刃を押し付けるばかりか、そこへ更に斬りつけるような所業…
それによる心痛に、胸を痛めてのこと…
それがやり過ぎだと、そう伝えたかったんだろう?
それは、ただのいじめだと。
だから重なった。
当時の自分と、皆から口々に実父を優しいと言われ、それ以外の一切を存在すら否定され続けた情景と。
だからこそ放っておけなかった。彼の元敵につかざるを得ないぐらいには」
ケイト「……ねちっこい女は嫌い?」
フィン「まさか^^(ふっ)
第一、人のことを慮らずに、自分の気を晴らす為だけにねちっこく言い続けるのと
人の心、傷を慮って、庇う為に、あの心痛を味わって欲しくない一心に駆られて言い続ける言動。
それらでは、全くもって異なる、相容れないほどの隔たりを持つものだ。
ましてや、それらが同じはずがないだろう?
もし前者だと誤解するのなら、させておけばいい。大いにね(黒にやり)
その方が、変な虫にたかられるよりはよっぽどマシだ。
たとえ僅かなりともその念が入っていたとしても…僕は君のことを誇りに思うよ(微笑)
人の為に怒れる、痛める、戦える。自分の為には決して動けないのに…そんな尊敬に値する『心』を」
ケイト「でも…その人を好きな人は守れない。
傷付くんじゃないの?本当なら両方守れながら諭せれば」
フィン「ない」きっぱり
ケイト「!」
フィン「そんな道は、どこを探してもない。皆無だ」
ケイト「…」
フィン「それに…殺しと、好き嫌いと、どっちが重い?
そんなこともわからないか?
天秤にかける、それ以外の選択を取りたい。
それもわからないでもないが、こればかりは無理だ。罪の重みが違い過ぎる。
だから…それを好きな人から殺した人、奪った人を善人と言われることは、殺された人達からすれば激痛にしかならない。
ただ言っただけ、それさえもが大罪としかならない。そうさせない為じゃなかったのか?」