第62章 新たな邂逅
彼「聞かせて下さい。
聞かないと…いけない気がする。
他人事じゃない…そんな気が。
一体…俺達と、国王…どう違うんですか?」
商人「…お前達のは綺麗事、詭弁よ。
求めるのは自分の気持ちだけ。
人の気持ち考えない、寄り添わない。
綺麗事が『実現』しているのは仲間内だけ…偽物よ。
国王の綺麗事はお前達とは違う。
どんな敵でも、相手でも、心あるものとして扱い、その気持ちを慮ろうとする。
どんなに綺麗事だと罵られようと、貶されようと、貶してくる相手ごと守ろうとする馬鹿よ。
デメリットしか与えない、害しか与えない相手にも優しく当たる、接しようとする大馬鹿よ。
そんな馬鹿だから…私達は国王になって欲しいと願ったよ。
どんなに固辞されようと、土下座して頼み込んだよ。
わかるか…?
国王は…綺麗事を、本物となした。
どんな敵にでも、どんな相手にでも、その心に寄り添い、慮る。
時には付け上がられる、つけこまれる、それでもそれごと愛そうとする」
「大変な時、力を貸して欲しいからじゃねえのか?」
彼「ずきっ!!)
…あ」
「ツナ?」
彼(俺…同じこと…ザンザスや皆にしてた)
商人「力が欲しいからじゃない。
実際…求められたことなんて、一度としてない。
求められたのは…「幸せになること」、ただ一つ。
そして力を貸さないといけない状況にさせない為に、不安にさせない為に、たった一人で飛び込んでいこうとする。
犠牲なら自分ただ一人の方がいいと、そう思うお人よ。
そして顔合わせる度、こう言うよ。
「大丈夫か?」
「幸せか?」
「いつも…国を回してくれて、ありがとう」
そう…心を、気をかける。砕けて与え続ける。
見返りも求めず、愛する。
見返りを求められたことも無い、天界へ帰った時のことなんて微塵も考えてない。
あるとしても「誇れる自分で、堂々と頑張ったと、あの世に帰って、死んだ家族と笑い合うこと」、ただ一つよ。
何度だって幸せだって言ってるのに…
「ずっとそうだとは限らないだろ?」
そう言って憚らない。
感謝に絶えないと言うのに「こっちの台詞だ^^」と笑いかける。
そんな国王…未だかつて見たこともないよ。
そんなお方だから…
お前達に一縷の望みかけて、優しく諭す道選んだよ。
お前達、その意味…分かるか?」